2013年1月20日日曜日

レイクパウエル 11 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


クラークは携帯電話から大きく目を離して電話をかけ始めた。老眼にはスマートフォンでも文字が小さ過ぎるようだ。
「ウェーブって知っているか?うんうんそうか、それじゃ」
クラークは数カ所に電話をしたが、ウェエーブの情報を持っている人はいなかったようだ。世界的に有名な場所だと信じていた僕にとっては驚きの事実だった。
玄関から突然大男がクラークの家に入ってきた。正確にはクラークの息子の家だ。玄関から入ってきた男はクラークの息子、タバーンの親友だった。
「ウェーブって聞いたことあるか?」
クラークはその大男にそう聞いた。
「おお、知っているよ。知り合いのフォトグラファーが写真を取りに行ってたよ。人数制限のある場所だろ。入り口はとくにゲートがあるわけじゃないようだ。俺の友達が迷ったふりしてウェーブに入り込んだら公園のオフィサーに捕まったらしい。そいつは知らなかったの一点張りで難を逃れたらしい。」
やっとウェーブを知る男が登場。日本で超有名は世界で有名とは限らないので注意。それにしても地元の奴らがほとんど知らないと思ってはいなかった。
クラークはかなり面目なさそうだった。ペイジには10年以上住んでいたから何でも俺に聞け、と豪語していたのだからそれはそうであろう。
「どうやらウェーブは日本のマスコミが勝手に持ち上げたんだろうね。日本のマスコミは何でも話題を大げさに取り上げるからそのせいだろう。きっとウェーブは日本でだけ有名なんだろう。」
「いや、アメリカのマスコミはもっとひどい。大体アメリカ人てのは旅行に行くと大体旅行先で嫌われている。これは恥ずべきことだが・・・・」
クラークの話が長くなりそうだったので素早く今夜のキャンプの話題に話を切り替えた。
「快適な家に泊めてもらえるのはものすごく嬉しいんですが、砂漠の世界にドップリ浸かりたい。どこか良いキャンプ場はないかな。バックカントリーの雰囲気がたっぷり出ているところがいいんですが。」
「それだったら素晴らしい場所がある。昔子供達をよくつれていったな。僕も今夜一緒にキャンプしよう。」
クラークはキャンプ道具を車に積み始めた。クラークのキャンプ道具は見事にシンプルだった。2人用テント、寝袋、ヘッドライト、ストープ、鍋、水筒、以上だ。
キャンプの準備が終わるとすでに午後の4時だった。
「クラーク、今日の夕食は何にしようか?」
「夕食?夕食ならさっきエミリーがパスタ作っていたぞ。早めの夕食をとってからキャンプに出かけよう。」
日本生まれ日本育ちの僕にとっては夕食作りもキャンプの醍醐味の一つである。一般アメリカ人にとって食とは腹を満たす行為でだけしかないらしい。南西部の砂漠地帯の食文化に大いに落胆した瞬間であった。
その土地の食文化を知りたければ地元の人が使うスーパーマーケットに行けばいい。ペイジの町の一般家庭がよく使うスーパーマーケットとはアメリカ全国チェーンのウォルマートでありウォルマートにある食材がその土地の一般家庭の食生活全宇宙なのである。ちょろっとこの街に来たツーリストが発する悪口のように聞こえるかもしれないが多分大方当たっていると思う。
エミリーは鍋たっぷりのパスタを作ってくれた。
「いっぱい食べなさい。けんじの仕事だよ食べるのは。」
世界中どこに行ってもおばあちゃんと言うのは実に食べてほしい種族のようだ。たくさん食べるとたくさん喜ぶのでたくさん食べることにした。
ギュウギュウ詰めの腹をさすり、子供たちを車に乗せた。僕らのキャンプ道具は車に全部載っている。キャン道具と言うよりも2週間分の生活道具全てが車に積んである。「なるべくシンプルに生きること」をモットーとしている僕にとっては荷物の少なさが大変心地よい。旅に出ると強制的に必要最低限の「物」で生活しなければならない。
クラークの車を追い。彼、おすすめのキャンプ所に向かった。


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