2013年1月30日水曜日

レイクパウエル 12 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


ハイウェイを30分ほど走るとクラークのトラックはダートロードに入った。僕らのファミリーバンはダートの道はちょっとつらい。それでもクラークの日産トラックにかろうじてついて行った。
ダートロードは岩山に囲まれた砂漠地帯をどこまでも続いている。クラークのトラックは乾いた大地の砂煙をもうもうと上げて進んで行く。彼のトラックに近づき過ぎると砂煙で全く前が見えなくなる。時折、対向車とすれ違うと砂煙が視界を完全に遮る。僕はブレーキを踏んでスピードを十分落として視界が戻るまでやり過ごした。その間にクラークのトラックははるか彼方にすっ飛んでいる。地味にスピードを上げてなんとか追いつく。その繰り返しで結構疲れる運転である。

途中ハイキングコースのトレイルヘッドをいくつも見かける。それぞれ数台の車がとまっていた。結構ハイキングにはポピュラーな場所のようである。
元気よく走っていたクラークのトラックがスピードを落とし小道に入っていった。ついて行くとそこはキャンプ場だった。トイレ以外の施設はないが、各キャンプサイトには屋根のついた吾妻屋とピクニックテーブル、そして焚き火が出来るファイヤーピットが設置されている。それぞれのキャンプサイトはお互い干渉しない程度に離れており、僕が泊まった事のあるキャンプサイトの中ではトップクラスの場所だった。
「思ったより遠くて悪かったね。30分ぐらいで着くと思ったんだけど。昔来た時にはそれぐらいで着くと思ったんだけど。ごめんごめん。」
時計を見ると既に5時近い。話を聞けば現在は既に40歳を過ぎたタバーンを連れてきたのが最後らしい。それでは覚えていなくて当然だ。
「素晴らしいキャンプ場だろう。しかも無料!」
アメリカには無料のキャンプ場が多い。無料キャンプ場のガイドブックが発売されているぐらいである。大抵の無料キャンプ場は管理されていること無くビール瓶やタバコの吸殻が散乱しているような場所多いのだが、ここは素晴らしく手入れが行き届いていた。
キャンプサイトを決めてクラークと周辺を散歩する。
「健司はアリゾナトレイルって知っているか?かなり有名だから健司みたいなリサーチ好きな奴は誰でも知っているはずだ。何?知らない?アリゾナからメキシコまで伸びているトレイルだ。多分世界的に有名なはずだ。僕とエミリーはこのアリゾナトレイルの数マイルを作ったんだ。スコップを持ってね、ボランティアで・・・・」
残念ながら僕はアリゾナトレイルの存在を知らなかった。後で知った事だがかなり有名なトレイルだ。
太陽が沈む前にファイヤーピットに薪を入れて火をつける。大きな木が新聞紙一枚で簡単に本格的に燃え上がる。
完全に日が沈むと焚き火を囲んで話が盛り上がる。クラークも珍しくビールに手をだした。一年でアルコールを飲むのは数回らしい。久々のアルコールでクラークの話は盛り上がる。以前に聞いたことのあるストーリーが再び語られる。僕はそれを聞いても面倒な気分にはならなかった。初めて聞くストーリーのようにドキドキしながらクラークの話を楽しんだ。
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2013年1月20日日曜日

レイクパウエル 11 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


クラークは携帯電話から大きく目を離して電話をかけ始めた。老眼にはスマートフォンでも文字が小さ過ぎるようだ。
「ウェーブって知っているか?うんうんそうか、それじゃ」
クラークは数カ所に電話をしたが、ウェエーブの情報を持っている人はいなかったようだ。世界的に有名な場所だと信じていた僕にとっては驚きの事実だった。
玄関から突然大男がクラークの家に入ってきた。正確にはクラークの息子の家だ。玄関から入ってきた男はクラークの息子、タバーンの親友だった。
「ウェーブって聞いたことあるか?」
クラークはその大男にそう聞いた。
「おお、知っているよ。知り合いのフォトグラファーが写真を取りに行ってたよ。人数制限のある場所だろ。入り口はとくにゲートがあるわけじゃないようだ。俺の友達が迷ったふりしてウェーブに入り込んだら公園のオフィサーに捕まったらしい。そいつは知らなかったの一点張りで難を逃れたらしい。」
やっとウェーブを知る男が登場。日本で超有名は世界で有名とは限らないので注意。それにしても地元の奴らがほとんど知らないと思ってはいなかった。
クラークはかなり面目なさそうだった。ペイジには10年以上住んでいたから何でも俺に聞け、と豪語していたのだからそれはそうであろう。
「どうやらウェーブは日本のマスコミが勝手に持ち上げたんだろうね。日本のマスコミは何でも話題を大げさに取り上げるからそのせいだろう。きっとウェーブは日本でだけ有名なんだろう。」
「いや、アメリカのマスコミはもっとひどい。大体アメリカ人てのは旅行に行くと大体旅行先で嫌われている。これは恥ずべきことだが・・・・」
クラークの話が長くなりそうだったので素早く今夜のキャンプの話題に話を切り替えた。
「快適な家に泊めてもらえるのはものすごく嬉しいんですが、砂漠の世界にドップリ浸かりたい。どこか良いキャンプ場はないかな。バックカントリーの雰囲気がたっぷり出ているところがいいんですが。」
「それだったら素晴らしい場所がある。昔子供達をよくつれていったな。僕も今夜一緒にキャンプしよう。」
クラークはキャンプ道具を車に積み始めた。クラークのキャンプ道具は見事にシンプルだった。2人用テント、寝袋、ヘッドライト、ストープ、鍋、水筒、以上だ。
キャンプの準備が終わるとすでに午後の4時だった。
「クラーク、今日の夕食は何にしようか?」
「夕食?夕食ならさっきエミリーがパスタ作っていたぞ。早めの夕食をとってからキャンプに出かけよう。」
日本生まれ日本育ちの僕にとっては夕食作りもキャンプの醍醐味の一つである。一般アメリカ人にとって食とは腹を満たす行為でだけしかないらしい。南西部の砂漠地帯の食文化に大いに落胆した瞬間であった。
その土地の食文化を知りたければ地元の人が使うスーパーマーケットに行けばいい。ペイジの町の一般家庭がよく使うスーパーマーケットとはアメリカ全国チェーンのウォルマートでありウォルマートにある食材がその土地の一般家庭の食生活全宇宙なのである。ちょろっとこの街に来たツーリストが発する悪口のように聞こえるかもしれないが多分大方当たっていると思う。
エミリーは鍋たっぷりのパスタを作ってくれた。
「いっぱい食べなさい。けんじの仕事だよ食べるのは。」
世界中どこに行ってもおばあちゃんと言うのは実に食べてほしい種族のようだ。たくさん食べるとたくさん喜ぶのでたくさん食べることにした。
ギュウギュウ詰めの腹をさすり、子供たちを車に乗せた。僕らのキャンプ道具は車に全部載っている。キャン道具と言うよりも2週間分の生活道具全てが車に積んである。「なるべくシンプルに生きること」をモットーとしている僕にとっては荷物の少なさが大変心地よい。旅に出ると強制的に必要最低限の「物」で生活しなければならない。
クラークの車を追い。彼、おすすめのキャンプ所に向かった。


2013年1月4日金曜日

レイクパウエル 10 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった。


次の日も同じように起きるまで寝て午前中は湖水浴を楽しみ午後にカヌーを浮かべ湾内のクルーズを楽しんだ。夜は相変わらず数限りない星の下で最高の焚き火を堪能し、テントに入った。翌日は昼までゆっくりし、キャンプ道具をカヌーに再び積み込み車を止めてあるビーチに戻った。

パーティー会場になっていたビーチはウイークデイを迎えすっかり静かになっていた。僕らのシェビーミニバンは無事ビーチに残っていた。カヌーから運び出した荷物を車に積み込む。改めてカヌーの積み下ろしの便利さを実感する。

重いカヌーをミニバンに載せ終わると僕らは再びクラークおじさんとエミリーの家に向かった。僕らはそのままクラークとキャンプを楽しむ予定だった。

「おかえり。どうだった湖は?いっぱい泳いだかい。この辺りの人は泳ぐ季節じゃないから貸切だっただろう。」

若者の崖ジャンプの度胸試しを楽しんでいたが、子供が遊んでいる姿は全く見かけなかった。40度以上まで気温が上がる砂漠地帯ではすっかり秋の雰囲気に入り、泳ぐという気分にはならないらしい。

クラークの住むペイジ近郊には世界的に有名な観光地が数多く点在している。その中でも最も有名なのが「アンテロープキャニオン」である。砂岩でできた美しい渓谷で写真を見たことのある人も多いだろう。「アンテロープキャニオン」で画像検索すれば簡単にその絶景を見ることが出来る。


もう一つ有名な場所が「ザ・ウェーブ」だ。ペイジから西に30分ほど車を走らせた砂漠地帯にある。砂漠に現れる岩山の一部が数センチ単位の細かい地層が地殻変動で波のようにうねりを作りだしている。希少な景観を守るために1日20人に入場が制限されている。入場許可を取るにはインターネットでの抽選、もしくはペイジの隣町「カナブ」のインフォメーションセンターで早朝の抽選会に参加しなければならない。世界でたった20人だけが入場を許可される超有名スポットだ。インターネットでも「死ぬまでに一度は見てみたい風景ベスト10」などに選ばれている。

「クラーク、ウェーブはどの辺りにあるんですか。」

「ん?ウェーブ?聞いたことが無いな。エミリー、そんな地名聞いた事ある?」

「いや、聞いたことないね・・」

なんとペイジに10年以上住んでいたことがあるのに世界的に有名な「ザ・ウェーブ」を知らない。というよりも「ザ・ウェーブ」は日本でのみ「世界的に有名」だということが判明。こんなのは他にもたくさんありそうだ。





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