2012年3月20日火曜日

ジャクソンホール Day3 ティトンパス 前編

前日の天気予報は午後からの雪の確立が50%。パッとしないパウダージャンキーの心を沈ませる内容の予報だった。
早朝に起きて雪が降っていればジャクソンホールから1時間ほど走った所にある、グランドターギーと呼ばれるスキー場に向かうことになっていたが、起きてモーテル窓の外を見ると曇り空だが一切落ちて来る物体はない。それどころか、モーテルに到着した時に比べて駐車場の雪は少なくなり、水溜りが出来始めていた。夜明け間もないというのに我々が住んでいるカナダ内陸部ではありえない気温だ。
僕はすっかりやる気をなくした。
僕の子供達を除く全員が寝起きのもじゃもじゃ頭で集まった。人間としての生態そのものの姿でリビングルームで人間が生物として今日はどうすれば幸せを最も満喫できるかを協議。
「これはどうしようもないですね。」
とタク。
僕もそう思う。1時間先のグランドターギーに出かけても、この気温ではターギーのゲレンデはもっちゃん言うところのたこ焼きだらけに違いない。ガソリンとリフト券代の無駄だ。しかし、僕のかみさんユキヨは気持ちが収まっていないようだ。
「今日一日何もしないで2泊もモーテルに宿泊しているよりは、滑りに行ったほうがいいんじゃないの。ここまで千キロ以上ドライブしているんだよ。今日一日何もしないなんてもったいない。」
一理ある。
「もったいない」の一言には重みがある。悲しいが、一言で言うと僕らは基本的に根性がビンボーである。冬の間、ろくに仕事もせず、滑りに全てをかけて来たやつらが裕福なわけがない。コンディションが悪いから何もせずにお金をセーブ、もしくはせっかくお金を使ってここまで来たのだから無駄にしないで最大に楽しむ努力。どちらも正解だ。
ゆきよを残して一同2度寝を開始した。僕はこの旅で初の遅寝を楽しんだ。再び覚えていない夢を楽しみつつ午前中の惰眠をむさぼった。
11時頃目を覚ます。子供達はもちろんすでに目覚め、リビングルームを走り回っていた。すっきした頭で今日の過ごし方を考えてみた。滑れなくともせっかくの旅行だから精一杯楽しみたい。
僕の身体に染み付いたビンボー根性は僕のの気持ちを貧しくもするが、お金では解決できない素晴らしいアイディアを生み出す事がある。突然僕の頭の中に貧乏根性の神が降りてきた。
ジャクソンホールに来る途中の事である。標高2千メートルを越えるティトンパスを越える時に無数のバックカントリースキーヤーのトラックを見かけた。ティトンパス頂上の駐車場には明らかにバックカントリー目的の車が停まっていた。ティトンパズ頂上からの下りはロウギアに入れたまま左右にハンドルを切りながら急な坂道を下った記憶がある。峠を下るとき、峠からかなり下った場所でもスキーのトラックを見かけた。いうこといは、峠の頂上から滑り出したスノーボーダーを峠の下で拾える場所があるのでは?・・・峠をドライブしている時に頭の中にそんな事を考えていた。
「町に行くぞ、調べたい事がある。」
子供達とかみさんを車に詰め込んでジャクソンホールの町に向かった。時間がない。この時点で昼の12時だ。

12時30分
ジャクソンホールで一番大きな登山用具屋に行った。バックカントリーの事はショップの店員に聞くのが一番早い。
この登山用具屋はどうやら夏のフライフィッシングとハンティングに強いようだ。北米のスポーツ店には3種類のタイプがある。
ホッケーやアメフト、テニスなどのスポーツ用品店。僕はこのタイプの店には全く興味なし。
釣りやハンティング用のスポーツ店。ここでは釣り用具とライフルを主に扱う。日本ではこのタイプのショップを見かけることはない。カナダに住む僕はこのタイプの店に驚くことはないが、アメリカでは拳銃が置いてあるのが印象的だった。ハンドガンは対人用だ。カナダの店には対人用ハンドガンを置いている店は皆無。近くてもやはり違う国だと実感する。
最後にキャンプ用品などの山岳関係を取り扱う店。今日僕が探しているのはこのタイプの店だ。
ジャクソンホールで最初に入ったスポーツ店でバックカントリー関連のガイドブックを扱っている店を聞くと町の地図まで取り出して実に親切に教えてくれた。

13時00分
拳銃売り場のおっさんに教えてもらった山ショップに行く。町の中心からかなり北にある店だった。店の名前は忘れたが、山ガイドもやっているような店なので僕が欲しい情報にありつけそうだと期待する。
店内の書籍売り場を物色していると40半ばぐらいの店員が話しかけてきた。
「何かお探しですか?」
「ああ、この辺りのバックカントリーのガイドブックを探している。ティトンパスの駐車場から一番簡単にアクセス出来てしかも帰りも登り返さなくていいようなコースを探している。この辺りのバックカントリーガイドブックはないのかい?」
「残念ながらガイドブックはないのです。あるのはバックカントリーエリアの写真集だけですね。」
写真集を見せてもらうと、ティトンパス周辺の斜面の山の斜面の写真が隈なく掲載されている。さすがアメリカフリースタイル。写真を見て自分のラインは自分で探せというわけか・・・
写真集を見ているとシーバスと呼ばれるエリアが一番気軽に行けそうに見えた。
「このシーバスって場所が一番気軽に行ける地域に見えるんだけど。ここはどう?」
「おっしゃる通り!、シーバスが一番簡単です。峠の頂上から滑ったら峠下の駐車場に簡単に出る事が出来ますから。峠の頂上から20分ほどハイクすると電波塔が出てきます。その電波塔を過ぎた辺りから下れば迷うこともありません。
「ありがとう。貴重な情報、助かったよ。」
僕は娘に大きなお花の付いたニットキャップを買ってあげると急いで宿に車を走らせた。

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