到着したレイクパウエル湖畔はレイブのパーティー会場のようになっていた。ウーハーを積んだ車が大音量で重低音を響かせている。若者達は4輪バギーで走り回り、ジェットスキーが爆音を立てて鏡のような湖面を切り裂きながら猛スピードで突き進んでいる。
「おい、大丈夫か?これ。」
僕はウィルダネスを期待していた。本当にこの湖で大自然を満喫出来るのだろうか。
カミさんに問いかけようとした時にはすでに折りたたみ椅子を出してリゾート気分を楽しもうとしている。子供たちを水着に着替えさせ、日傘を出し、到着5分後にはビーチの雰囲気にすっかり溶けこんでいた。
僕は重いカヌーを車から降ろし、食料をキャンプ地用と行動中に分けてパッキング。予備のパドルを確認。3泊4日分の装備をしっかり確認し始めた。
装備は最小限に抑えなければならない。バックカントリーに入るには荷物を最小限に抑えるべきだというのが僕の持論だ。最小限でありながら何か事故があった時には必要な物は全て揃えておかなければならない。
今回の旅の装備を記しておく。
・住居
テント
テントマット各一枚
寝袋
ヘッドランプ各一つ
・食事
コールマンツーバーナー
鍋大小2つ
フライパン
スプーン・フォーク各一セット
ナイフ
ライター数個
塩・故障・醤油
朝食3日分 インスラントラーメン
昼食3日分 サンドウィッチの材料
夜食3日分 初日豪華にステーキ、レトルトのカレー、パスタの材料
・その他必要装備
トング
ランタン
ファーストエイドキット
着替え各2組と雨具と防寒着
船修理キット
以上の装備があればバックカントリーで生きて行く事が出来る。むしろ無駄をすっかり省いた生活は気持ちいいぐらいだ。自動的に我が家では2ヶ月ぐらいインフラが止まっても食料さえあれば全く問題なく生活出来る術を家族揃って身に着けている。
しかし、最低限の生活は動物の生活だ。人間は「社会的動物である」と言ったのは誰か忘れたが有名なエライ人だ。(ケインズだっけ?)生命維持の装備だけでは人間は楽しめない。そこで贅沢品をいくつか持って行くことになる。
・贅沢品
かみさん:数冊の本だけ
幼児二人:絵本6冊、i-pad(車に置いていくのが不安なのでやむを得ず)、クラークの所からもらってきたぬいぐるみ4つ(一つ一つがでかい!オーストラリアのウォンバットぐらいある)
僕:本、iphone、そして、ビール350缶36本、
僕は子供達が巨大なぬいぐるみを持っていくのに難色を示し、カミさんがバスタオル一枚、下着一枚多く持って行くのにもさえうるさく意見した。しかし、
「あなたのビールに比べれば・・・」
の一言で一刀両断。僕の「装備は最小限に」というモットーはすっかり崩れ去るのであった。確かに妻の下着一枚なんてビール36缶に比べれば羽毛のような重さである。反論は絶対に不可能である。
カヌーというのは実に優秀でかなりの積載量がある。また、シーカヤックと違ってトラックの荷台に荷物を載せるようにガンガン考えなしで積みこむことが可能だ。
持っていく道具をストイックに絞り込む必要がある冬山の縦走とは違い、大量の荷物が必要になる家族全員で文明の届かない自然の世界を縦漕出来るのはカヌーという道具ならではの楽しみである。僕の大好きな自然の中に入っていく行為は子供が出来て以来一旦諦めなければならなかった。僕一人で行けばいいのだが、僕は僕の責任全てと楽しみたいのである。バックパッキングで山に入るのに彼女達の寝袋まで持っていくのは不可能では無いが快適で楽しい体験とは程遠い。そんなストレスを解消してくれたのがカヌーである。カナダに住んでカヌーに出会った事を心から感謝している。なにせビール36缶積んでもウィルダネスに入って行けるのだから。
PS.エドさんゆかちゃん借りてたパドルここでも使っちゃいました。今度返しに行きます。ごめりんこ。
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