週末のパーティー会場と化しているビーチを後にして目的地、ワーウィープ湾から北に伸びる大きな入江を目指した。爆音で音楽を楽しむ若者のグループを湖面から眺めながらビーチ沿いに漕ぎ進む。ビーチにはジェットスキーが頻繁に出入りし、ジェットスキーが作る波が僕らのカヌーを軽く揺らす。ビーチ沿いに北に向かう。
目的のキャンプ地は出発地点の対岸にある。対岸に一番近い地点を目指して、湖岸沿いにカヌーを進めた。
出発地点のビーチからは頻繁にジェットスキーが出入りする。ジェットスキーやモーターボートを楽しむ人々たちは老若男女関わらず、僕らのカヌー近くを通り過ぎる時には速度を落とし波が立たないように気を使ってくれる。湖遊びの常識がまるで交通ルールのように浸透しているのに感心する。
それにしてもアメリカ人はモーターが好きだ。レイクパウエルは水上のモータースポーツのメッカでもある。モータースポーツといっても規制が細かく決まっているヨーロッパ発祥のF1のような上品なものではなく。ただただ、モンスターエンジンを積んで爆走するのがいいようである。エンジンはデカければデカイほど偉い。エンジン音も同じ。そして何にでもエンジンを付けてしまう。前に走るものには何でもエンジンを付ける。スケートボードはもちろん、スニーカーにも付けてしまう。そのうちベビーカーにもエンジンを付けるに違いない。 最後のベビーカーは冗談で書いたが、本当にあるかもしれないのがアメリカだ。
ワーウィープ湾にはローンロックと呼ばれる巨大な岩山が犬歯のように湖から突き出し、一周約600メートルほどある巨石は不気味とも言える存在感を放っている。高さは10階建てのビル以上の高さがあり、下の部分3分の1は白っぽく変色している。かつてこの湖が満水だった頃には白く変色した部分は全て水の下に沈んでいた。現在レイクパウエルの水位は年々下がり続けているらしい。下流にあるラスベガス、ロサンジェルスの人口増加に伴い水が不足し、カルフォルニア州では水源確保が深刻な問題になっている。
湖岸を漕いて最も対岸に近いと思われる場所を見つけて湖を横断する。クラークの孫、ブライセンが一度カヤックで渡ったことがあり、聞くとほんの20分ぐらいだったという。それでも湖岸から離れるのは緊張した。湖岸から離れ、ウエイクボードを引っ張るボートに怯えながら全力で対岸まで漕ぐとたったの15分で対岸に着いた。
目的の入江の入り口は意外と大きかった。事前に地図を入手して調べてきたが、この地図が全く役にたたない。かつてこの湖が満水だった頃に作られてた地図は湖岸線が全く異なっており。島が半島になり、多くの入り組んだ入江はなくなっていた。その代わり新しい入江が複雑に出来上がっていた。
今回ナビゲーションに最も役にたったのはiphoneだった。電話会社の地図では湖全体が通話エリア内だったが実際にはほとんど場所が微弱な電波しか捉えることができないか、もしくは全く通じない。それを見越してアイフォーンに今回漕ぎそうなエリアを全てダウンロードしておいた。アイフォーンのGPSは実に優秀で体感数メートルの誤差で自分のいる位置を示してくれた。グーグルのマップと合わせて使うと最強である。アウトドア-ショップに売っているGPSのクオリティーが馬鹿らしい程低く感じる。水位によって激しく変わるレイクパウエルの湖岸線もグーグルの地図が最も正確だった。紙媒体は手に馴染み慣れ親しんでいるが、情報の速さでデジタルにはかなわない。
バックカントリーに入るに際して様々な意見がある。ある人はアイフォーンはもちろん携帯電話を持ち込むのは邪道だという超ハードコアな意見もあれば、携帯は緊急時対策でOKである、しかしながらGPSはアウト、コンパスを使いなさいという意見まで様々だ。
バックカントリートリップはゲームだ。最新のギアーに限らず、持って行く物を制限すればするほど難易度が高いゲームになる。エベレストの無酸素然りだ。
今回の旅を最も困難にしているのは子供が一緒であるということだ。チャレンジは許されない。二重三重のセキュリティーを用意しなければならない。いかにバックカントリートリップを安全に楽しむかを優先したので、ハイテクギアに遠慮無く頼り、考え得る中でも最も安全を重視した装備で臨んだ。
出発が午後だったので、早めにキャンプ地を決めることにする。キャンプ地の条件は、周りに誰も居なく、ビーチがあり、テントを張る平らな場所があることだ。そんな条件の場所はなかなか無いだろうと複雑な湖岸にそってカヌーを漕ぐと間もなく良さそうな場所が見つかった。「もっといい場所があるはずだ。」と更に良い場所を探し、結局見つからなくて時間だけを無駄にするというミスを過去何度も繰り返してきたのでファーストインプレッションを信じてそこにキャンプを張ることにした。
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絶景キャンプの紹介頑張ります。
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