2012年11月29日木曜日

レイク・パウエル 5


上陸して荷物を下ろす。子供たちはライフジャケットが脱ぎたがったが、それは無理。水辺にで遊ぶときは必帯である。荷物を下ろす作業は簡単に終わった。100リットルの防水バックと調理道具を入れた箱を運び出せべほぼ荷降ろしはおしまい。カヌーならでは気軽さである。これがシーカヤックとなるとそうもいかない。シーカヤックは船室が細かく分かれているのに加えて荷物室の入り口が小さい。荷物を積む時にはまるでパズルのように考えながら上手に荷物を積まないと大量の荷物は積めない。また、取り出すときも口の狭いツボから取り出すように少しずつしか荷物を取り出すことは出来ない。気軽さで言えば、カヌーに軍配が上がる。しかしながら、岸まではるか遠い場所を行くならばひっくり返っても再び乗り込みやすいシーカヤックの方が圧倒的に安全である。カヌーとカヤックには一長一短があるので状況によって使い分ける必要がある。
すっかり荷物を下ろし終え、テントを張る。テントはノースフェースのロードランナー3人用。友人がアウトドアショップの懸賞て当てたものを譲ってもらった。子供が3歳、4歳なので3人用でちょうどよい。もっと大きな物を買えば長く使えるが、アウトドア用品って実はあまり長く使わない。人間の技術の進歩は凄まじく、次から次へと新しい製品が出てくる。特に携帯電話をはじめとする電子機器はその度合が凄まじいのは誰でもご存知であろう。昨日の製品が今日は数割引で悔しい思いをしたのは僕だけでは無いはずだ。アウトドア用品も例外では無い。現在のピッケルやアイゼンは驚くほど軽くなり。寝袋の下に敷くマットでさえ軽量化が著しく向上している。そのうち現地まで飛んで行ってくれるテントまで出かねない勢いである。「一生もの」という言葉は広告業界が作り出した消費者にものを買わせるための言葉なので注意が必要だ。「一生もの」なんてものは産まれた時のへその緒一つで十分である。しかも、現在、世の中の物が安くなっている。古いものはバンバン捨てるべきである。そして便利な新しいものに切り替えるべきである。こうしてどちらにせよ。誰もが広告業界に踊らされて生きていくのである。
とにかくテントを張った。下は岩なのでペグが全く入らない。夜は家族全員が寝るのでどんな強風が吹いてもテントが飛んで行く事は無い。テントが風で飛ばないようにテント内部の四隅になるべく重い荷物を置いた。
時間はすでに4時。10月の終わりなので6時すぎには太陽が沈む。太陽が沈むまでに夕食を済ませなければならない。湖に近い位置にコールマンのツーバーナーをセットしキッチンを作る。初日は保存の効かない食材を中心にメニューを考えた。アメリカの砂漠といえば・・・・・何も出てこないですよね?アメリカ内陸部にいつ来ても感じるのは食生活の貧しさである。ラスベガスの高級レストランに行けばいくらでも充実した食生活が送れるかも知れない。ここで言う食生活とはそういうものとは違う。庶民レベルでの話だ。アメリカのスーパーマーケットに入るとその大きさに圧倒される。ズラリと並んだ缶詰、ジュース、冷凍食品に圧倒されるが、その一方野菜などの青果物の種類の少なさに圧倒される。特に魚類は一切期待してはならない。肉コーナーが魚コーナーを侵略し、お!鯛か?と思えばティラピアの切り身、それと色の変わり初めたマグロ君がわずかに健闘してるのみである。ここはアリゾナだ、文句ある奴はそこにマルちゃんのインスタントラーメン、チキン味24個入りが一箱あるからそれ喰ってろ!というインスタントバンザイ態度が丸出しである。昆布でダシを取って味噌を煮立てないように溶かすなんて繊細さは当たり前に無いのだが、コレにお湯入れればそれだけでウマイぜ!とか、味付き調理済冷凍手羽先10キロ千円どうだ!という雰囲気に満ちている。こうなるとその雰囲気に飲まれ、「それじゃ、今日はでっかいステーキでも焼くか!豪快にな!はっはっは!」と、いうことになり、初日の夕食はステーキに決まった。ステーキは炭火で焼くことにしてそれ以外の付け合せなどを未だ強烈な太陽の光を浴びながら調理し始めた。

僕らのキャンプサイトは細いフィヨルドのような入江の入り口付近にあるため、モーターボートを見かける事はあまりなかったが、小型の釣り船やジェットスキーが時折目の前を通り過ぎていった。太陽が地平線に近づくにつれて船の行き来も少なくなってきた。太陽が完全に沈むとテントから少し離れた場所で火を起こす。砂漠なので薪は極端に乾燥し、新聞紙一枚で簡単に大木に火がつく。火を囲んで家族だんらんの時を過ごす。夕日が残すピンク色の空が次第に濃紺に侵略されていく。空全体が濃紺に染まると共に無数の星が瞬き始める。焚き火と星以外に一切光のない世界。空は星の明かりが空を支配し、地上の僕らを照らす焚き火はその光が安定せず、ゆらゆらと足元を舐めるように照らす。宇宙からの光に圧倒されながら焚き火の明かりをコントロールしていると、なんだが分からないが「地上に生きている」と感じることが出来る。今日の、明日の楽しみの為に小さな明かりを灯して短い夜の楽しみを終え、食事を済ますとさっさとテントに入った。

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