ハイウェイを30分ほど走るとクラークのトラックはダートロードに入った。僕らのファミリーバンはダートの道はちょっとつらい。それでもクラークの日産トラックにかろうじてついて行った。
ダートロードは岩山に囲まれた砂漠地帯をどこまでも続いている。クラークのトラックは乾いた大地の砂煙をもうもうと上げて進んで行く。彼のトラックに近づき過ぎると砂煙で全く前が見えなくなる。時折、対向車とすれ違うと砂煙が視界を完全に遮る。僕はブレーキを踏んでスピードを十分落として視界が戻るまでやり過ごした。その間にクラークのトラックははるか彼方にすっ飛んでいる。地味にスピードを上げてなんとか追いつく。その繰り返しで結構疲れる運転である。
途中ハイキングコースのトレイルヘッドをいくつも見かける。それぞれ数台の車がとまっていた。結構ハイキングにはポピュラーな場所のようである。
元気よく走っていたクラークのトラックがスピードを落とし小道に入っていった。ついて行くとそこはキャンプ場だった。トイレ以外の施設はないが、各キャンプサイトには屋根のついた吾妻屋とピクニックテーブル、そして焚き火が出来るファイヤーピットが設置されている。それぞれのキャンプサイトはお互い干渉しない程度に離れており、僕が泊まった事のあるキャンプサイトの中ではトップクラスの場所だった。
「思ったより遠くて悪かったね。30分ぐらいで着くと思ったんだけど。昔来た時にはそれぐらいで着くと思ったんだけど。ごめんごめん。」
時計を見ると既に5時近い。話を聞けば現在は既に40歳を過ぎたタバーンを連れてきたのが最後らしい。それでは覚えていなくて当然だ。
「素晴らしいキャンプ場だろう。しかも無料!」
アメリカには無料のキャンプ場が多い。無料キャンプ場のガイドブックが発売されているぐらいである。大抵の無料キャンプ場は管理されていること無くビール瓶やタバコの吸殻が散乱しているような場所多いのだが、ここは素晴らしく手入れが行き届いていた。
キャンプサイトを決めてクラークと周辺を散歩する。
「健司はアリゾナトレイルって知っているか?かなり有名だから健司みたいなリサーチ好きな奴は誰でも知っているはずだ。何?知らない?アリゾナからメキシコまで伸びているトレイルだ。多分世界的に有名なはずだ。僕とエミリーはこのアリゾナトレイルの数マイルを作ったんだ。スコップを持ってね、ボランティアで・・・・」
残念ながら僕はアリゾナトレイルの存在を知らなかった。後で知った事だがかなり有名なトレイルだ。
太陽が沈む前にファイヤーピットに薪を入れて火をつける。大きな木が新聞紙一枚で簡単に本格的に燃え上がる。
完全に日が沈むと焚き火を囲んで話が盛り上がる。クラークも珍しくビールに手をだした。一年でアルコールを飲むのは数回らしい。久々のアルコールでクラークの話は盛り上がる。以前に聞いたことのあるストーリーが再び語られる。僕はそれを聞いても面倒な気分にはならなかった。初めて聞くストーリーのようにドキドキしながらクラークの話を楽しんだ。
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