2013年2月28日木曜日

レイクパウエル 14 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


ボートランプにある小さな桟橋にはもう一台の車が停まっていた。若い男性が車からカヤックを下ろしていたので声をかけてみた。
「こんにちは。どちらまで?」

「こんにちは、僕らは東にある入江を目指します。これから2泊だ。楽しみですね。」
「僕らは逆の方向へ一泊だよ。お互い楽しみましょう。」
彼らは3人パーティーだ。大量の荷物を車から下ろし、カヤックに荷物をパズルのように考えながら積み込ん積み込んでいた。やはり荷物のハンドリングは圧倒的にカヤックよりもカヌーの方が楽である。
風の全くない青空が広がってる。夕方近い午後の太陽が砂漠の赤い岩肌と湖の水面を強烈に照らす。
照り返した光線が激しく肌を刺す。ユキヨは奇妙なぐらいつばのお大きな帽子を被り、バンダナで顔を覆っている。このままアメリカのコンビニに入れば間違い無く即銃殺されるであろう。
それでも砂漠の太陽対策はこれぐらいやらないと数時間で真っ黒だ。女性にはぜひ日焼けに気を使ってほしい。
穏やかな水面を切り裂くように進む。岸からなるべく離れないようにカヌーを進める。対岸までは約1キロ。レイクパウエル全体から見れば湖の幅は非常に狭い。転覆しても、子供達を岸まで着ける自信はあるが、最大の安全策を取る。
岸際を漕ぐと浅瀬を通過する。気をつけないとカヌーの底が岩に乗り上げるぐらい浅くなっている場所がある。軽いカヌーなので乗りあげても大した事にはならないので気にせず岸に近い場所を漕ぐ。
水深が浅い場所を通過する度に水の色が緑色に変化し、水中の地形がグラデーションのように水の色を変化させる。そんな水面下の劇場に見とれながらカヌーを進める。
「おい、お前ら。水の中を見てみろ。きれいだぞ。」
子供達に声をかける。相変わらず子供の反応は少ない。子供にとって水面の色の変化よりもテレビの中のアニメの方が刺激が強く感動的だ。
よく考えれば当たり前の理論を親は理解せず子供に大人の価値感を押し付ける。自然が素晴らしくテレビが良くない理由は誰が創りだした常識か。
しかしながら当然僕の感情もエゴに走りイライラしてしまう。この際この感情は無視しよう。僕ら夫婦が楽しめればそれでいいではないか。親がハッピーなら子供がハッピーが我が家の持論である。僕らは十分感動しながらカヌーを進めた。
途中、アンテロープキャニオン行きの観光船とすれ違う。観光船には数人の客が乗っていた。手をふると皆笑顔で手を振り返してくれた。観光地は基本的にほがらかムードでいい。
1時間ほどでアンテロープキャニオンの入り口に着く。入り口の幅は20メートルほど。ガイドブックを見るとキャニオンの入り口付近にはいくつもキャンプ可能な場所が記してある。キャニオンに入ると両側は5メートルほどの崖が続く。上陸出来そうな場所を探してゆっくり漕ぐが、全く上陸できそうな場所は見当たらない。
キャニオンを30分進んだところでガイドブックを改めて確認すると既にキャンプ可能な印がある場所を数カ所過ぎてしまっていた。
前回のトリップでもガイドブックと湖岸線が全く変わっていたのを思い出した。かつて上陸可能だった場所も湖の水位が下がりキャンプ可能地点ははるか崖の上になってしまったようだ。
気がついた時には日没が近づいていた。僕らはアンテロープキャニオンから出るとキャニオン入り口近くに上陸出来る場所を見つけテントを張った。
キャンプ地は上陸してから数分岩のスロープを登った場所に設営した。周りを岩に囲まれた砂漠で実に夕日が美しい場所だった。キッチンを水際に作り簡単な夕食を済ませて子供達の世話を妻に任せ、夕日のよく見える岩の上で本を読みながらビールの栓を抜いた。最高のひとときだった。明日の度ではひどい目に遭うことも知らずに・・・・

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2013年2月6日水曜日

レイクパウエル 13 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


太陽がテントを照らす前に目が冷めた。テントから出るとキーンとした空気の中、クラークが既にワンバーナーでお湯を沸かしてコーヒーを入れていた。

砂漠の朝はテントから出た瞬間、身体全体をリフレッシュさせてくれる。海から千キロ以上離れた乾燥した大地では一日の気温差が半端ではない。朝に10度以下だった気温が午後の2時を過ぎると30度近く上がることは珍しくない。
砂漠の夜明けでは頭から熱が放射され、寝袋の中でモヤモヤしていた脳が叩き起こされる。太陽が岩の間から東の岩山を照らし始めると、あっという間に僕の足元まで光がやってくる。足元を照らした太陽は長く伸びた僕の影を映し出し、一気に身体を暖める。そこにクラークの入れたインスタントコーヒーを喉に流し込むと今日一日の始まりだ。
キャンプ場全体が目覚め出した。朝早く起きだしたキャンパー達はそそくさと荷物をまとめて車に乗り込みキャンプ場を去って行く。ほぼ満員のキャンプ場の人々は一体どこを目指しているのだろうか。答えはキャンプ場を出て行く車のダッシュボードにあった。
ダッシュボードには何か許可証のようなものが置いてある。よく見れば「ザ・ウェーブ」への許可書である。このキャンプ場の人気は「ザ・ウェーブ」に支えられていたようだ。
キャンプ道具をまとめてハイウェイに向けてダートロードを走ると沢山車が停まっているトレイルヘッドがあった。トレイルヘッドに駐車している車のダッシュボードにはキャンプ場で見かけた許可書が置いてある。どうやらここが「ザ・ウェーブ」入り口らしい。すでに駐車場には人気がなかった。
クラーク宅に着く。今日はまた、レイクパウエルのバックカントリートリップに出発する日である。クラーク宅でシャワーを浴びてゆっくりする。

今日は休日だがクラークの孫達は忙しい。小学6年生ぐらいの年になる男の子のブライセンは毎週末サッカーの試合だ。下の子エリザベスはダンス教室。送り迎えするクラークも実に忙しい。せっかくのゴツイ日産トラックもファミリーカー状態である。奥さんとはすでに離婚している子供達の父親は救急救命士で現在ナバホ族の村に出張中で帰って来ない。クラーク夫妻はこの家に無くてはならない存在である。
キャンプ生活が続いたせいか、クラーク宅で思わずゆっくりしてしまった。僕はブライセンとスケートボードを近所の教会の巨大な駐車場で楽しみ、子供達はブライセン兄妹の小さい頃のおもちゃや本を漁っていた。またカヌーに積み込む荷物が増えること間違いなしである。僕は心から巨大なぬいぐるみなどが出てこない事を願った。
バックカントリーに向けて出発である。すでに午後3時。のんびりはいつもの通りだが、真面目なアウトドアマンには怒られる時間だ。今回のトリップはまた2泊3日。レイクパウエルのアンテロープポイントという場所から漕ぎ出す。アンテロープポイントはかの有名なアンテロープ・キャニオンがレイクパウエルに続く渓谷の近くにある。
アンテロープキャニオンポイントは人気が無くひっそりとしていた。ボートをおろすランプの入り口に国立公園レンジャーの車が停まっていた。
僕らがボートランプに近づくとレンジャーの車から若いオフィサーが出てきた。
「こんにちはどちらまでですか?」
「ここから2泊カヌーで漕ぎだしてキャンプをする予定だ。」
実は明日にはこのボートランプは閉鎖になります。きょう漕ぎだしてもいいんですが、帰って来る時には水際まで車は入れません。」
「了解!教えてくれてありがとう。」
本来はクルーザーなどを下ろすためにある、水面下まで続くコンクリートの傾斜した道を水際まで車を進めた。
カッコ悪いファミリーバンから日焼けで変色した赤いカヌーを降ろし、水面に浮かべた。かみさんは子供達にライフジャケットを付けて、細々とした荷物を車から降ろす。僕はカミさんが下ろした荷物をカヌーに積み込む。
コクピット席と子供達の乗るスペースを快適にしつらえると出発の準備はOKだ。カミさんの本OK、俺の酒OK、子供たちのおもちゃOK!バケーションは残り少ない。一泊二日のウィルダネスへの旅の始まりだ。

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