2013年5月14日火曜日

レイクパウエル 17 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


30前後のカップルが僕らに追いつき、彼らも上陸した。彼らの船は「シットオントップ」と呼ばれサーフボードの上に座席があるタイプの船だった。日本では沖縄などの南国で使われる事が多い。このパウエル湖も真夏は40度を越える砂漠の中だ。夏は快適そうだが、10月に使用するにはちょっと寒そうである。軽く挨拶だけして僕らはキャニオンの奥に向かって歩き始めた。
水面から砂地に変わった谷底を歩く。いじけた低い植物が時折砂地を張っている。近づいて見ると鋭い刺がある。砂漠の植物のほとんどは攻撃的な形態をしている。乾燥した空気と明らかに栄養に乏しい大地には極端に生命の影が薄い。生命は他の生命を犠牲にすることなしに生きることは出来ない。他の生命から自らの命を守るために攻撃的にならざるえないのかもしれない。以上の理由から僕はベジタリアンにはなれない、もちろんベジタリアンを否定するつもりはない。それぞれ自分の信仰を信じて生きていけばいいと思いう。
両側にそそり立つ崖に触っるとざらついた砂岩だ。爪でひっかくと簡単に傷がつく。渓谷を奥に歩くにつれて、目線の高さのに落書きが目立つ。一番多いのは名前と日付だ。カップルの名前が圧倒的に多い。ハートマーク付きの記念書き込みは結構痛い。他に盛り上がれる記念碑はないのだろうか。どうせならパスルやクイズを書き込んでくれたほうがまだマシだ。バカを宣伝したい奴らの広告を見ながら更に奥を目指す。
そろそろ帰ろうと言い出したのはカミさんだった。日が高いうちに帰るべきだと主張。この谷を遡って行けばアンテロープキャニオンの中でも有名なコークスクリューに到達する。もっと奥まで進みたかったが、カミさんの考えに同意して引き返すことにする。
バックカントリーでの遭難事故の被害者は圧倒的に男性が多い。男性にはプライドという男性を男性たらしめしていると同時にくだらないちっぽけな感情があり、それが予想を越えて最悪の事態を引き起こすことがある。バックカントリーに入ると僕は女性の意見を非常に尊重することにしている。それがたとえバックカントリーの知識がない人の意見だとしても女性の危機に感する感覚は男性よりも優れていいるのではないかと思う。一般的に男性に比べて女性の方が「知識」に乏しい。一方男性には「知識」マニアが多い。子供でも男の子は新幹線の駅を全て暗記したりする。「知識」は男性を雄弁な自信家に育て上げる。しかし、平均寿命は女性のほうが圧倒的に高い。女性の方が生への感覚が高いような気がする。反論も有ると思うが、僕はその意見に反対するつもりは全くない。なんの根拠もない。完全に僕の感覚でそう思うだけだ。
カヌーに戻り、渓谷を漕ぎ戻る。来た時と同じ美しい風景が僕らを包む。両岸の高い崖とその上に広がる完全なる青が現れては後方に進む。順調にキャンプ地までカヌー先端は水面を切り開いていった。
風が強くなっきた。キャニオンの出口まではあと1キロほどだ。蛇行するキャニオンを漕ぎ進めとあるカーブを曲がると風が強くなって来た。完全な向かい風だ。ここからはあとカーブを3つほど曲がりパウエル湖の本体に出れば20分ほどでキャンプ地に帰れるはずだ。距離にして1キロ無いはずだ。
風にバウを向けて力強く漕ぐ。カヌーにとって風は大きな抵抗になる。キャンプ道具を積んでいないため船体が軽いのでさらに影響が大きい。
風が次第に強くなっていく。湖面には細かいさざ波が立ち、カヌーを風に向けて真っ直ぐ向けるのが難しくなってくる。パドリングをスターンプライからカナディアンストロークに変えて推進力を加える。
風が更に強くなる。さざ波が高い三角波に変わりカヌーの船首を一定方向をキープするのが困難になって来た。それどころかカヌーは一切前に進まない。
風は力を増し水面の水を飛ばし始めた。風に飛ばされた水が顔を刺す。バウにいる嫁はもっと水を浴びているはずだ。
「お前ら、カヌーの中にしゃがめ!」
半ば叫び声に近い調子で子供達の頭を船の中に入れる。少しでも風の抵抗を無くさなければカヌーを操作出来ない。カヌーを風に対して横にしたら最後、転覆も免れないほどの大風になって来た。風が湖面の水を拾い上げ空中に飛沫を飛ばしそれが僕らに襲いかかる。カヌーは左右に翻弄され時折壁に近づく。壁に押し付けれられたらどうなるか分からない。僕はカヌーを水路の真ん中にキープして向かい風に耐えた。
これは絶対前に進めない。僕は両岸を高い崖に囲まれたキャニオンの中で、カヌーを転覆させないようシングルパドルのフィン水中で力いっぱい掻き回した。

2013年4月27日土曜日

レイクパウエル 16 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


予備のパドルや昼食など必要なのもをカヌーに積み込みキャンプを出発する。天気は上々風一つない晴天だ。アンテロープキャニオンの入り口まではたったの20分。入り口は昨日と変わらず高い崖に挟まれた狭い水路になっていた。水路に入ると両側の壁が精神を圧迫する。赤茶けた岩肌と青空のコントラストが美しい。
一般的に有名なアンテロープキャニオンはパウエル湖のはるか上流に位置している。コークスクリューと呼ばれる渓谷は、沢の水が何千年もの月日をかけて複雑な蛇行した渓谷を作り出している。すでに谷の底の水は干上がり砂地である。渓谷は狭く、正午前後にだけ太陽の光が渓谷内を照らし美しい砂岩の地層を照らし出す。写真家には特に有名なのでガイドブックやウェブの旅行記などで目にしたことがある人も多いだろう。
僕らが侵入した渓谷はその有名な景勝地から数キロ下流だ。幅は広いところで20メートル。観光バス2台分の広さあるが、切り立った崖に囲まれているので上陸出来る場所は非常に限られている。
驚愕すべきは水路の両側の崖の高さだ。正確には分からないが少なくとも20メートル以上の完全に、完全に!垂直に切り立った赤茶けた崖が空に向かって伸びていた。砂漠の中の狭く切り取られた青空はまるで天の川だ。高い崖に囲まれた水路はその幅を広くそして時には圧迫感を感じるほど狭く幅を変えてカヌーの行き先に現れる。

こういう場所に来ると感動してばかりはいられない。両側は完全に切り立った崖だ。船がひっくり返ったら上陸する場所はほとんどない。それでも水際には時折人が数人立てる岩棚がある。岩棚がある場所をしっかり頭に入れながらカヌーを進める。前を漕ぐ嫁はたぶん僕がこんなに神経を研ぎ澄まして漕いでいる事は全く知らないだろう。雌は日常生活を守り、雄は狩りをして日常生活を支え家族の安全を確保する。生物としてのメスとオスの役割は違う事を理解すれば大抵の夫婦げんかは無くなるのではないだろうか。日常離れした景色の中で日常生活を考える。そして子供達は今目の前にある景色が日常だ。初めて出会う景色が日常な幼児達はのんきに船底でお絵かきを楽しんでいた。先ほど苦労して書いた景色の描写など全く関係のない世界で楽しんでいる。
それにしても美しい。大人たちだけで人間が作り得ない自然の建造物を静かに眺めながら静かな水面をカヌーの舳先が切り開いて水面の静寂をかき乱していく。
目の前に現れる新しい景色がカヌー後方に流れて行く。流れ進んでいるのは僕らだが、両側の崖が後方に流れて行くように感じる。静かな世界で動いているのは僕らだけのように感じた。
2時間ほどカヌーを進めるとパドルが川底に触れた。川底に触れたパドルの先からは水中に土煙があがり水面下を一気に盲目の世界に変えた。しばらくクリアな水を泥水に変えながらパドルを続けるとカヌーの船底が湖底を削り前に進まなくなった。
カヌーで進む事を諦めた僕らはためらいながらヒザ下まである水に両足を浸し、軽くなったが子供達を載せたままのカヌーを完全に水が無くなる砂地まで引き上げた。キャンプ道具を積んでいないカヌーは素直に砂地に乗り上げ、子供達が上陸出来る深さまで引き上がる事が出来た。
地上に降りた僕らはまだ崖に囲まれた狭い空の下にいた。今までの風景と違う点は周りに水がない事、僕ら自身の足で地上に立っている事、その2点だけだった。上陸地点から数分も歩かないうちに谷底には植物が多い茂っていた。遠い昔に水が無くなった事を示している。
アメリカの水不足は深刻だ。このレイクパウエルが作られてから一度もこの湖が満水になった事はない。レイクパウエルから流れ出る水はコロラド川となりグランドキャニオンを通りメキシコ湾に注ぐはずだが、メキシコで農業用水に全ての水を吸い取られ、最終的にはドブ川のようになり海まで到達していない。グーグルの地図で見れば分かるが、かつてはコロラド川が大量の水をメキシコ湾まで注いでいた。アメリカの人口増加と近代化が水の流れを変えてしまったのか。皮肉にもアメリカを代表する河川「コロラド川」を見ると誰にでも分かる。

2013年3月22日金曜日

レイクパウエル 15 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった

夕日が沈むまで岩の上でビールを飲む。思考が薄くなり、心地良い気分で夕日が岩の間に沈んでいく様子を眺める。沈んだ夕日の光が岩の間から漏れる頃になると自分の頭上を越えて反対側は黒に近いブルーが広がる。濃いブルーの中には星がまたたき、星の数が徐々に増えていく。星が空全体を覆う頃には明日を目指す太陽は完全にその光を失い、闇に星が繰り出す光の点が隙間なく空を覆い尽くす。
アルコールに侵された頭脳で宇宙を感じたところでテントに戻る。テントは本を読む嫁のヘッドランプで弱い灯台になっていた。その弱い光を頼りにテントのファスナーを開けて一言も言葉を発せず寝袋で闇の星を頭に浮かべて眠りに入った。
毎日やってくる朝を迎える。 相変わらずテントが太陽に暖められて体温上昇にて目が覚める。子供達は汗をびっしょりかいているのに意地になっているかのように目を覚まさない。テントの入口のファスナーを開けると一気に新しく冷たい空気がテント内に流れ込み心地良い。
いつものように嫁のコーヒーの為にお湯を沸かす。子供達の朝食を作る。自分の腹に食料を入れて心身共に落ち着く。キャンプ生活に慣れると一定のリズムが出来る。まるで高校時代学校に行く平日の朝のように朝起きてから学校に着くまでのルーティーンのように身体に一連の作業が身についてくる。
朝の儀式を終え、ジリジリと刺す太陽の元で子供達と遊ぶ。子供達と充実した時間を過ごした・・・なんて感じることは僕には絶対にない。いつも仕方なく遊ぶ。壮大な景色に見とれてゆっくり景色を眺めて時を過ごしたい。太陽で暖められた間もなく正午の暖められた空気に触れて誰にも邪魔されずに長編小説を読みたい。午後の灼熱の太陽の下、適当な高さの崖を見つけて思い切り冷たい湖面に飛び込んでみたい。やりたいことはいっぱいあるが子供達は僕に執拗にからんでくる。仕方なしに全て諦め子供達の相手をする。何度も何度も同じギャグをやらされ心からうんざりする。
思い返せば、長女が6ヶ月を迎えた頃には夫婦一緒に座って食事をした記憶がない。長女は起きている間は立って抱いていないと泣き続ける赤ちゃんだった。今思い返すとあの苦労も良い想い出だが当時は本当に大変だった。大変だったが今思い返せば本当に心から懐かしい。そんな経験があるから今でも仕方なく心底自分のやりたいことを諦め自分の子供と遊ぶ。気の長い期待が将来最高の楽しみに変わるのを楽しむセンスは20代の頃には絶対なかった感覚である。
子供達のしつこい要求をいい加減振り切り早めの昼食を済ませる。アンテロープキャニオンに向けて出発だ。


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2013年2月28日木曜日

レイクパウエル 14 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


ボートランプにある小さな桟橋にはもう一台の車が停まっていた。若い男性が車からカヤックを下ろしていたので声をかけてみた。
「こんにちは。どちらまで?」

「こんにちは、僕らは東にある入江を目指します。これから2泊だ。楽しみですね。」
「僕らは逆の方向へ一泊だよ。お互い楽しみましょう。」
彼らは3人パーティーだ。大量の荷物を車から下ろし、カヤックに荷物をパズルのように考えながら積み込ん積み込んでいた。やはり荷物のハンドリングは圧倒的にカヤックよりもカヌーの方が楽である。
風の全くない青空が広がってる。夕方近い午後の太陽が砂漠の赤い岩肌と湖の水面を強烈に照らす。
照り返した光線が激しく肌を刺す。ユキヨは奇妙なぐらいつばのお大きな帽子を被り、バンダナで顔を覆っている。このままアメリカのコンビニに入れば間違い無く即銃殺されるであろう。
それでも砂漠の太陽対策はこれぐらいやらないと数時間で真っ黒だ。女性にはぜひ日焼けに気を使ってほしい。
穏やかな水面を切り裂くように進む。岸からなるべく離れないようにカヌーを進める。対岸までは約1キロ。レイクパウエル全体から見れば湖の幅は非常に狭い。転覆しても、子供達を岸まで着ける自信はあるが、最大の安全策を取る。
岸際を漕ぐと浅瀬を通過する。気をつけないとカヌーの底が岩に乗り上げるぐらい浅くなっている場所がある。軽いカヌーなので乗りあげても大した事にはならないので気にせず岸に近い場所を漕ぐ。
水深が浅い場所を通過する度に水の色が緑色に変化し、水中の地形がグラデーションのように水の色を変化させる。そんな水面下の劇場に見とれながらカヌーを進める。
「おい、お前ら。水の中を見てみろ。きれいだぞ。」
子供達に声をかける。相変わらず子供の反応は少ない。子供にとって水面の色の変化よりもテレビの中のアニメの方が刺激が強く感動的だ。
よく考えれば当たり前の理論を親は理解せず子供に大人の価値感を押し付ける。自然が素晴らしくテレビが良くない理由は誰が創りだした常識か。
しかしながら当然僕の感情もエゴに走りイライラしてしまう。この際この感情は無視しよう。僕ら夫婦が楽しめればそれでいいではないか。親がハッピーなら子供がハッピーが我が家の持論である。僕らは十分感動しながらカヌーを進めた。
途中、アンテロープキャニオン行きの観光船とすれ違う。観光船には数人の客が乗っていた。手をふると皆笑顔で手を振り返してくれた。観光地は基本的にほがらかムードでいい。
1時間ほどでアンテロープキャニオンの入り口に着く。入り口の幅は20メートルほど。ガイドブックを見るとキャニオンの入り口付近にはいくつもキャンプ可能な場所が記してある。キャニオンに入ると両側は5メートルほどの崖が続く。上陸出来そうな場所を探してゆっくり漕ぐが、全く上陸できそうな場所は見当たらない。
キャニオンを30分進んだところでガイドブックを改めて確認すると既にキャンプ可能な印がある場所を数カ所過ぎてしまっていた。
前回のトリップでもガイドブックと湖岸線が全く変わっていたのを思い出した。かつて上陸可能だった場所も湖の水位が下がりキャンプ可能地点ははるか崖の上になってしまったようだ。
気がついた時には日没が近づいていた。僕らはアンテロープキャニオンから出るとキャニオン入り口近くに上陸出来る場所を見つけテントを張った。
キャンプ地は上陸してから数分岩のスロープを登った場所に設営した。周りを岩に囲まれた砂漠で実に夕日が美しい場所だった。キッチンを水際に作り簡単な夕食を済ませて子供達の世話を妻に任せ、夕日のよく見える岩の上で本を読みながらビールの栓を抜いた。最高のひとときだった。明日の度ではひどい目に遭うことも知らずに・・・・

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2013年2月6日水曜日

レイクパウエル 13 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


太陽がテントを照らす前に目が冷めた。テントから出るとキーンとした空気の中、クラークが既にワンバーナーでお湯を沸かしてコーヒーを入れていた。

砂漠の朝はテントから出た瞬間、身体全体をリフレッシュさせてくれる。海から千キロ以上離れた乾燥した大地では一日の気温差が半端ではない。朝に10度以下だった気温が午後の2時を過ぎると30度近く上がることは珍しくない。
砂漠の夜明けでは頭から熱が放射され、寝袋の中でモヤモヤしていた脳が叩き起こされる。太陽が岩の間から東の岩山を照らし始めると、あっという間に僕の足元まで光がやってくる。足元を照らした太陽は長く伸びた僕の影を映し出し、一気に身体を暖める。そこにクラークの入れたインスタントコーヒーを喉に流し込むと今日一日の始まりだ。
キャンプ場全体が目覚め出した。朝早く起きだしたキャンパー達はそそくさと荷物をまとめて車に乗り込みキャンプ場を去って行く。ほぼ満員のキャンプ場の人々は一体どこを目指しているのだろうか。答えはキャンプ場を出て行く車のダッシュボードにあった。
ダッシュボードには何か許可証のようなものが置いてある。よく見れば「ザ・ウェーブ」への許可書である。このキャンプ場の人気は「ザ・ウェーブ」に支えられていたようだ。
キャンプ道具をまとめてハイウェイに向けてダートロードを走ると沢山車が停まっているトレイルヘッドがあった。トレイルヘッドに駐車している車のダッシュボードにはキャンプ場で見かけた許可書が置いてある。どうやらここが「ザ・ウェーブ」入り口らしい。すでに駐車場には人気がなかった。
クラーク宅に着く。今日はまた、レイクパウエルのバックカントリートリップに出発する日である。クラーク宅でシャワーを浴びてゆっくりする。

今日は休日だがクラークの孫達は忙しい。小学6年生ぐらいの年になる男の子のブライセンは毎週末サッカーの試合だ。下の子エリザベスはダンス教室。送り迎えするクラークも実に忙しい。せっかくのゴツイ日産トラックもファミリーカー状態である。奥さんとはすでに離婚している子供達の父親は救急救命士で現在ナバホ族の村に出張中で帰って来ない。クラーク夫妻はこの家に無くてはならない存在である。
キャンプ生活が続いたせいか、クラーク宅で思わずゆっくりしてしまった。僕はブライセンとスケートボードを近所の教会の巨大な駐車場で楽しみ、子供達はブライセン兄妹の小さい頃のおもちゃや本を漁っていた。またカヌーに積み込む荷物が増えること間違いなしである。僕は心から巨大なぬいぐるみなどが出てこない事を願った。
バックカントリーに向けて出発である。すでに午後3時。のんびりはいつもの通りだが、真面目なアウトドアマンには怒られる時間だ。今回のトリップはまた2泊3日。レイクパウエルのアンテロープポイントという場所から漕ぎ出す。アンテロープポイントはかの有名なアンテロープ・キャニオンがレイクパウエルに続く渓谷の近くにある。
アンテロープキャニオンポイントは人気が無くひっそりとしていた。ボートをおろすランプの入り口に国立公園レンジャーの車が停まっていた。
僕らがボートランプに近づくとレンジャーの車から若いオフィサーが出てきた。
「こんにちはどちらまでですか?」
「ここから2泊カヌーで漕ぎだしてキャンプをする予定だ。」
実は明日にはこのボートランプは閉鎖になります。きょう漕ぎだしてもいいんですが、帰って来る時には水際まで車は入れません。」
「了解!教えてくれてありがとう。」
本来はクルーザーなどを下ろすためにある、水面下まで続くコンクリートの傾斜した道を水際まで車を進めた。
カッコ悪いファミリーバンから日焼けで変色した赤いカヌーを降ろし、水面に浮かべた。かみさんは子供達にライフジャケットを付けて、細々とした荷物を車から降ろす。僕はカミさんが下ろした荷物をカヌーに積み込む。
コクピット席と子供達の乗るスペースを快適にしつらえると出発の準備はOKだ。カミさんの本OK、俺の酒OK、子供たちのおもちゃOK!バケーションは残り少ない。一泊二日のウィルダネスへの旅の始まりだ。

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2013年1月30日水曜日

レイクパウエル 12 砂漠の渓谷に侵入!別世界が広がった


ハイウェイを30分ほど走るとクラークのトラックはダートロードに入った。僕らのファミリーバンはダートの道はちょっとつらい。それでもクラークの日産トラックにかろうじてついて行った。
ダートロードは岩山に囲まれた砂漠地帯をどこまでも続いている。クラークのトラックは乾いた大地の砂煙をもうもうと上げて進んで行く。彼のトラックに近づき過ぎると砂煙で全く前が見えなくなる。時折、対向車とすれ違うと砂煙が視界を完全に遮る。僕はブレーキを踏んでスピードを十分落として視界が戻るまでやり過ごした。その間にクラークのトラックははるか彼方にすっ飛んでいる。地味にスピードを上げてなんとか追いつく。その繰り返しで結構疲れる運転である。

途中ハイキングコースのトレイルヘッドをいくつも見かける。それぞれ数台の車がとまっていた。結構ハイキングにはポピュラーな場所のようである。
元気よく走っていたクラークのトラックがスピードを落とし小道に入っていった。ついて行くとそこはキャンプ場だった。トイレ以外の施設はないが、各キャンプサイトには屋根のついた吾妻屋とピクニックテーブル、そして焚き火が出来るファイヤーピットが設置されている。それぞれのキャンプサイトはお互い干渉しない程度に離れており、僕が泊まった事のあるキャンプサイトの中ではトップクラスの場所だった。
「思ったより遠くて悪かったね。30分ぐらいで着くと思ったんだけど。昔来た時にはそれぐらいで着くと思ったんだけど。ごめんごめん。」
時計を見ると既に5時近い。話を聞けば現在は既に40歳を過ぎたタバーンを連れてきたのが最後らしい。それでは覚えていなくて当然だ。
「素晴らしいキャンプ場だろう。しかも無料!」
アメリカには無料のキャンプ場が多い。無料キャンプ場のガイドブックが発売されているぐらいである。大抵の無料キャンプ場は管理されていること無くビール瓶やタバコの吸殻が散乱しているような場所多いのだが、ここは素晴らしく手入れが行き届いていた。
キャンプサイトを決めてクラークと周辺を散歩する。
「健司はアリゾナトレイルって知っているか?かなり有名だから健司みたいなリサーチ好きな奴は誰でも知っているはずだ。何?知らない?アリゾナからメキシコまで伸びているトレイルだ。多分世界的に有名なはずだ。僕とエミリーはこのアリゾナトレイルの数マイルを作ったんだ。スコップを持ってね、ボランティアで・・・・」
残念ながら僕はアリゾナトレイルの存在を知らなかった。後で知った事だがかなり有名なトレイルだ。
太陽が沈む前にファイヤーピットに薪を入れて火をつける。大きな木が新聞紙一枚で簡単に本格的に燃え上がる。
完全に日が沈むと焚き火を囲んで話が盛り上がる。クラークも珍しくビールに手をだした。一年でアルコールを飲むのは数回らしい。久々のアルコールでクラークの話は盛り上がる。以前に聞いたことのあるストーリーが再び語られる。僕はそれを聞いても面倒な気分にはならなかった。初めて聞くストーリーのようにドキドキしながらクラークの話を楽しんだ。
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